ネコが世界各地に広がっていった旅路が分かるかもしれない。ウイルスの感染によってDNAに組み込まれた痕跡を目印に、移動や品種の起源を探る手法を京都大などが見いだした。ネコの進化の謎を解明する新たな手掛かりとして期待される。(SANKEI EXPRESS)
■中東が故郷
ペットとして世界中で飼われているネコ。多様な品種(血統)があるが、全てヤマネコの亜種の「イエネコ」だ。祖先は中東の砂漠地帯で暮らす野生のリビアヤマネコとされる。農耕が始まったことで穀物を食い荒らすネズミの駆除が必要になり、約1万年前に家畜化されたようだ。地中海のキプロス島では約9500年前の遺跡から、成人とともに埋葬された子ネコの骨が見つかっている。古代エジプトはネコとの関わりが深く、約6千年前の先王朝時代の墓から骨が発掘された。文明が世界に広がるにつれて、ネコも人間と一緒にアジアや欧州へ移動。大航海時代には新大陸へ渡った。シルクロードを旅した仏教徒や交易商人、船乗り、探検家などが連れて行ったと推測できるが、詳しいルートは分かっていない。品種の起源についても、記録が十分でなく諸説ある。
■DNAを解析
ネコの進化系統はゲノム(全遺伝情報)解析で近年、急速に研究が進んできた。リビアヤマネコが祖先と分かったのも、母方から遺伝する細胞内小器官、ミトコンドリアのDNA解析による。また、アビシニアンという品種の発祥はエジプトとされていたが、インドだった可能性も浮上している。京大の宮沢孝幸准教授(進化ウイルス学)らは、大昔にネコに感染してゲノムに入り込み、子孫に受け継がれたレトロウイルスが追跡の新たな手掛かりになるとの論文をまとめた。宮沢准教授らは約20品種でDNA配列を比較。20万年前以降に感染したとみられるレトロウイルスに関連する配列を調べた結果、起源とされる地域によって保有率に差があることを突き止めた。調査した141匹のうち、欧米の品種は40~56%がこのウイルスを持っていたが、アジアの品種はほとんど持っておらず、日本にいる雑種を含めて3・8%だった。中東で家畜化されたネコのうち、欧米に向かったネコだけがこのウイルスに感染し、アジアに向かったネコは感染しなかった可能性がある。
■新大陸へ
ウイルスの配列がDNAに入り込む場所は不規則だ。しかし欧州のネコの一部と、北米の品種であるアメリカン・ショートヘアとアメリカン・カールは、いずれも同じ染色体上にウイルスが組み込まれていた。アメリカン・ショートヘアは、17世紀に英国の清教徒らとともに帆船メイフラワー号に乗って大西洋を渡り、北米に上陸したネコの子孫といわれている。欧州のネコと同じ場所にウイルスの痕跡が残っていたことは、これを裏付けた形だ。宮沢准教授は「偶然で同じ場所に入るとは考えにくく、共通祖先から進化したと考える方が妥当だ。ネコは品種ごとに見た目や性格、遺伝性の病気もさまざまで、こうした違いの解明にも研究を役立てたい」と話しており、さらにペルシャなどの品種でも起源の解析を進めている。(黒田悠希)
http://www.sankei.com/premium/news/150507/prm1505070005-n1.html
猫は交雑しやすいから野良のDNAは世界中あんまり変わらんかもね